2008年03月31日
家出少年記③
この季節にベンチの上で毛布にくるまって寝っているホームレスを見ると、
あの日の無人駅での夜の辛さが僕の脳裏に蘇る。
無人駅での夜は、
予想以上に寒く、長く、静かだった。
何度寝ても、
何度覚めても、
一向に夜が明けない。
時間を確認しようと思ったが、
お気に入りのGショックは昼間自転車で走行中にどこかに落としてしまったらしい。
時間を確認するために、
駅の近くにあるコンビニに入ったのだが、
今考えると明けない夜が怖かっただけだった。
2008年03月26日
家出少年記②
ただひたすら、
前へ前へ自転車のペダルをこぎ続ける。
時たま前方に現れる青看板だけを道標に。
高校までの通学路。
あれほど重かった自転車のペダルが嘘のように軽い。
あれほど憂鬱だった心が嘘のように晴れていた。
見知らぬ道を、
見知らぬ町を、
ただひたすら颯爽と走り抜ける。
「高校生活の3年間は人生にとって大変貴重な時間です」。
「ぜひ皆さん夢中になれるものを探してください」。
高校の入学式の日に、
偉そうに語っていた顔も名前も思い出せない人の言葉。
皮肉なことに、
僕は高校生活から開放されて初めて夢中になれるものを見つけた。
ふと気がつくと、
1日だけで200km。
僕は熊本県にいた。
2008年03月19日
家出少年記①
卒業シーズンがやってきた。
この時期になると思い出す。
9年前のあの日を・・・。
9年前、
僕は家出をした。
学校、センコー、クラスメイト、進路、
僕の周りを取巻くすべてに嫌気がさしていた。
今考えると、幼い、弱い、視野狭い。
だけど、あの時の僕には現実から逃げ出すしか術がなかった。
朝5時起床。
真っ暗な居間。
ばれないようにマメ電球だけをつける。
テーブルの醤油さしの前に、
「旅にでます」とだけ手紙に書き残し、家を出た。
お年玉の3万を握り締め、
親父がマウンテンバイクと間違えて買ってきた、
緑の塗装が剥げ落ちたママチャリに乗って。
2008年03月10日
夜の単発ブログ小説② 『席を譲る男』
私は席を譲ることに関しては、
誰にも引けを取らない。
公園のベンチ、
バスや電車内のシート、
待合室の椅子・・・・・・・。
今まで誰一人として私の『席ユズリ』を断ったものはいない。
やがて、
その噂は広がり全国のツワモノどもが私に挑んできたが、
彼らもまたすべて敗れ去った。
そして今日、
遂に私は『席ユズラレナイ』チャンピンオンと対戦した。
チャンピオンの名前は、
バカニスルナ=オレハソンナトシジャナイヨ。
無口で、偏狭で、頑固、私がもっとも苦手とするタイプだ。