2008年03月31日
家出少年記③
この季節にベンチの上で毛布にくるまって寝っているホームレスを見ると、
あの日の無人駅での夜の辛さが僕の脳裏に蘇る。
無人駅での夜は、
予想以上に寒く、長く、静かだった。
何度寝ても、
何度覚めても、
一向に夜が明けない。
時間を確認しようと思ったが、
お気に入りのGショックは昼間自転車で走行中にどこかに落としてしまったらしい。
時間を確認するために、
駅の近くにあるコンビニに入ったのだが、
今考えると明けない夜が怖かっただけだった。
午前2時。
客もいないコンビニに入った僕は、
さえないバイトの店員の視線をまったく気にせず、
乱雑に置いてある少年誌を手に取り読みふけった。
少年誌、週刊誌、漫画本、
あらゆる本を読んだが、
時間がまったくたたない。
コンビニの薄汚い壁にかけてある時計の、
長針と短針が動いている気配もない。
さきほどまで気にもしなかった店員の視線が、
まるで僕をあざ笑っているかのようにも思えた。
居てもたってもいられなくなりコンビニを飛び出る。
とにかくひと気のある所へ行きたかった。
とにかく人の温度が感じられる場所へ行きたかった。
走っても、
走っても、
前へ進んでいる感覚がない。
奇妙な暗闇が僕の体全身を包み込み、
行く手を拒んでいるような気さえした。
どれだけ走っただろうか。
僕は息をきらし目を閉じ、
アスファルトの上に大の字に寝そべる。
自分が呼吸する音だけが、
やけに耳についた。
ふと、
真上を見上げると、
一人の女性が僕の顔を見下ろしていた。
つづく
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