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2008年04月10日

家出少年記④

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深夜に道路のど真ん中で、
大の字に寝そべっている一人の少年。


それを覗き込む一人の女性。


今考えるとあんなヘンテコな光景は、
あの時あの場所で世界中を探しても僕等だけだったに違いない。
          
「何やってんの」と、突然彼女は僕の顔をみて言った。
その問いに少し戸惑いながら、「何やってんすかね」と答える僕。
その答えが可笑しかったのかなぜか彼女は僕の顔を見てちょっとだけ笑った。

彼女は熊本市内で働くホステス。
仕事がひと段落し、家に帰る途中で道路の上の少年を見つけたのだそうだ。


あんな真夜中普通の女性なら男に遭遇するのさえ避けたいはずだが、
なぜか彼女は道路の上の少年に興味を持ったらしい。

異様に露出度の高い服装。 ちょっとキツめの香水とお酒の匂い、 化粧で端整に整えられた顔だちから、 はじめは年上の女性という印象を受けたが、 年齢を聞くと同年代ということがわかった。

年齢を聞いて改めて顔を見てみると、
ちょっとだけ顔に幼さが残っているような気もした。

これまでの経緯を彼女に聞かれたが、
「今日家出してチャリンコ漕いでたらここまで来ました」とは、
馬鹿すぎて言えなかったので、自転車旅行という嘘をついた。


その嘘の話になぜか彼女は興味をもったらしく、
色々な質問を僕に投げかけてきた。

困った僕はつい嘘に嘘を重ね…。
            
「真夜中の峠で野生の猪と格闘した話」とか、
「公園で出遭った老夫婦の話」とか、
「美人女子大生とのせつない恋の話」やら、
たった一日目の家出少年は、
ワイドショーに取り上げられるほどの自転車少年を演じていた。

彼女の興味は尽きることなく、
家出少年が創りあげたあらゆるエピソードにお腹を抱えて笑った。


彼女の反応がおもしろかったのか、
ただ人と話していたかったのか、
僕は未体験の話をどんどん創りあげては彼女に話した。

話に夢中になっているうちに気がつくと、
あんなに怖かった夜が明けようとしていた。

【つづく】

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